円満な婚約破棄と一流タンクを目指す伯爵令嬢の物語
「コンドルのくせに生意気ね。受けて立ってやろうじゃないの。手加減はいらないわ。本気で振り回してきてちょうだい」
 あえて挑発的なことを言って木刀を構えると、案の定、コンドルは顔を真っ赤にして木刀を振り下ろしてきた。狙いはわたしが右手に持っている木刀らしい。
  
 わたしにケガをさせないようにという配慮なのだとしたら、コンドル、あなた意外と紳士ね。
 でもそんな気遣いは無用よ。

 右半身を後ろに引くと、コンドルの木刀はスカッと空を切った。

 あれ?という顔をしたコンドルが体勢を立て直して再び木刀を振り下ろし、わたしはそれを難なくかわす。
 それを何度か繰り返した後、コンドルは一旦木刀を下して小さく深呼吸した。

「赤毛のくせにやるじゃねーか」
「あなた、いちいち大振りなのよ。鳥だけにやっぱり馬鹿なのね」

 冷静になりかけていたコンドルの顔が気色ばむ。
 そうでなくっちゃね、相手をおちょくって冷静な判断力を失わせるのも「回避系タンク」の重要な役割ですもの。

「コンドルはなあ、賢い鳥なんだぞ!」
「あら、自分がコンドルだって認めるのね?」
「黙れっ!」

 大きな構えから振り下ろしてくる太刀筋がさっきよりもスピードアップしている。
 それでも攻撃がワンパターンだから簡単に避けられた。

「わたしに一回でも当てられたら、あなたと世界中のコンドルに謝罪してあげるわ」

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