円満な婚約破棄と一流タンクを目指す伯爵令嬢の物語
「ねえ、可愛いんですってね。マリアンヌちゃん」
「え……」
思いもよらないことを言われて生まれた隙に便乗して一直線に打ち込んだ。
この人相手に逃げ回ってなどいられない。
一気に間合いを詰めて、両手で握った木刀でレオンがまだ軽く握ったままの木刀を下から跳ね上げる算段だった。
木刀同士がぶつかり合うガッ!という大きな音がしたものの、右手だけで握っていたレオンの木刀はビクともしていなかった。
こちらの両手首はこんなにジンジンとしているというのに、見上げて目が合ったレオンは薄ら笑いすら浮かべている。
やばい!
後ろに飛びのこうとしたその瞬間、レオンは空いている左手でわたしの手首をつかみ、そのまま担ぐようにしてくるりと大きな体を反転させる。
体がふわりと浮いた。
ええっ!まさかの背負い投げ!?
覚悟を決めて木刀を投げ捨てて目を強くつむったが、いつまでたっても地面にたたきつけられる衝撃がない。
「あれ?」
恐る恐る目を開けると、レオンの肩にそのまま担がれているわたしがいた。
「アーシャは手首を痛めたようだ。医務室に連れて行くから、あとは頼む」
ほかの指導官にそう告げると、レオンはわたしを軽々肩に担いだまま建物へと大股で歩いてゆく。
「下ろせ~~~っ!」
ジタバタ暴れても、鍛え上げられた体が岩のように固いレオンにとっては、撫でられているのと同じ感覚なのかもしれない。
こんなゴリラに向かっていったのが間違いだったわ。
回避系タンクはやっぱり、相手をおちょくりながら「逃げ」に徹しないといけないのね。
「え……」
思いもよらないことを言われて生まれた隙に便乗して一直線に打ち込んだ。
この人相手に逃げ回ってなどいられない。
一気に間合いを詰めて、両手で握った木刀でレオンがまだ軽く握ったままの木刀を下から跳ね上げる算段だった。
木刀同士がぶつかり合うガッ!という大きな音がしたものの、右手だけで握っていたレオンの木刀はビクともしていなかった。
こちらの両手首はこんなにジンジンとしているというのに、見上げて目が合ったレオンは薄ら笑いすら浮かべている。
やばい!
後ろに飛びのこうとしたその瞬間、レオンは空いている左手でわたしの手首をつかみ、そのまま担ぐようにしてくるりと大きな体を反転させる。
体がふわりと浮いた。
ええっ!まさかの背負い投げ!?
覚悟を決めて木刀を投げ捨てて目を強くつむったが、いつまでたっても地面にたたきつけられる衝撃がない。
「あれ?」
恐る恐る目を開けると、レオンの肩にそのまま担がれているわたしがいた。
「アーシャは手首を痛めたようだ。医務室に連れて行くから、あとは頼む」
ほかの指導官にそう告げると、レオンはわたしを軽々肩に担いだまま建物へと大股で歩いてゆく。
「下ろせ~~~っ!」
ジタバタ暴れても、鍛え上げられた体が岩のように固いレオンにとっては、撫でられているのと同じ感覚なのかもしれない。
こんなゴリラに向かっていったのが間違いだったわ。
回避系タンクはやっぱり、相手をおちょくりながら「逃げ」に徹しないといけないのね。