円満な婚約破棄と一流タンクを目指す伯爵令嬢の物語
マリアンヌが騙されて伯爵家に連れて来られた!とか思っていやしないだろうか。
ここは勢いよっ!
「マリアンヌさん!いらっしゃい!さっそく厨房に案内するわね、今日はどんなお菓子の作り方を教えてくださるのかしら、楽しみにしていたのよ」
背中をぐいぐい押して厨房まで行くと、そこに母が待ち構えていた。
何の飾りもないシンプルで質素なワンピースを着て、髪もおだんごにしてまとめている。
昨日しっかり言い含めておいて正解だった。
それでもマリアンヌにとっては母は「伯爵夫人」なわけで、もう今すぐに帰りたいという心の叫びが聞こえそうなぐらい狼狽しているマリアンヌを、母がそっと抱きしめた。
「大丈夫よ、緊張なさらないで。実はわたくしも昔は城下町のカフェ店員だったのよ」
母がそのカフェの店名を言うと、マリアンヌは驚いたように顔を上げた。
「ガトーショコラが有名なあのお店ですよね?」
「そうなの。今も昔も変わらずみなさんに愛されているカフェの看板娘だったのよ。あのガトーショコラ、今日一緒に作ってみない?」
「はいっ!是非お願いします!」
さすがお母様だわ、掴みはオッケーね!
というか、わたしにガトーショコラはレベルが高すぎるのだけど?
そう思っていたら、マリアンヌが「チュイール」というお菓子を提案してくれた。
スライスアーモンドが入った生地を薄く伸ばして焼くサクサク食感の焼き菓子らしい。
材料をささっと混ぜて、フォークで伸ばして、オーブンで焼くだけ…のはずが、1枚1枚かたちはいびつだし、均一の薄さに広げるのに時間はかかるし、悪戦苦闘した。
そんなわたしの横で、母とマリアンヌは、こっちのほうが実の親子なんじゃないだろうかと思うほどすっかり打ち解けた様子でガトーショコラの生地作りをしていて、その様子を厨房の入り口から覗いているレオンがいたのだった。
ここは勢いよっ!
「マリアンヌさん!いらっしゃい!さっそく厨房に案内するわね、今日はどんなお菓子の作り方を教えてくださるのかしら、楽しみにしていたのよ」
背中をぐいぐい押して厨房まで行くと、そこに母が待ち構えていた。
何の飾りもないシンプルで質素なワンピースを着て、髪もおだんごにしてまとめている。
昨日しっかり言い含めておいて正解だった。
それでもマリアンヌにとっては母は「伯爵夫人」なわけで、もう今すぐに帰りたいという心の叫びが聞こえそうなぐらい狼狽しているマリアンヌを、母がそっと抱きしめた。
「大丈夫よ、緊張なさらないで。実はわたくしも昔は城下町のカフェ店員だったのよ」
母がそのカフェの店名を言うと、マリアンヌは驚いたように顔を上げた。
「ガトーショコラが有名なあのお店ですよね?」
「そうなの。今も昔も変わらずみなさんに愛されているカフェの看板娘だったのよ。あのガトーショコラ、今日一緒に作ってみない?」
「はいっ!是非お願いします!」
さすがお母様だわ、掴みはオッケーね!
というか、わたしにガトーショコラはレベルが高すぎるのだけど?
そう思っていたら、マリアンヌが「チュイール」というお菓子を提案してくれた。
スライスアーモンドが入った生地を薄く伸ばして焼くサクサク食感の焼き菓子らしい。
材料をささっと混ぜて、フォークで伸ばして、オーブンで焼くだけ…のはずが、1枚1枚かたちはいびつだし、均一の薄さに広げるのに時間はかかるし、悪戦苦闘した。
そんなわたしの横で、母とマリアンヌは、こっちのほうが実の親子なんじゃないだろうかと思うほどすっかり打ち解けた様子でガトーショコラの生地作りをしていて、その様子を厨房の入り口から覗いているレオンがいたのだった。