円満な婚約破棄と一流タンクを目指す伯爵令嬢の物語
 母との折り合いも良さそうだし、上手くいくことを確信してレオンの帰りを待っていたのだけれど……戻って来た兄は、なんと泣いていたのだ。

 レオンが泣いているところなんて初めて見たかもしれない。
 しかも、もういい大人だというのに。

 ええぇぇぇっ!
 ま、まさか、お断りされたの!?

 駆け寄るわたしをレオンはいきなりぎゅうぎゅうと抱きしめた。

 今夜はガトーショコラでほろ苦い「レオンお兄様の失恋を慰める会」を開催することになりそうね…。


「ステーシア!ありがとう!おまえのおかげだ。マリアンヌにオッケーしてもらえたっ!」

 なんだ、びっくりさせないでよ。
 うれし泣きだったの?わかりにくいわ。

 レオンは帰りの馬車の中で、身分差を理由に渋るマリアンヌに誠心誠意自分の想いを告げて口説き倒したらしく、マリアンヌは半ば根負けするような形で了承してくれたらしい。

「お兄様、よかったわね。大事にしてあげてね」

 こんな力で目一杯抱きしめてはダメよ?
 わたしだから耐えているけど、か弱い女性だったら背骨が折れるかもしれないわ。

 もうっ、ほんとにゴリラなんだから。

 
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