円満な婚約破棄と一流タンクを目指す伯爵令嬢の物語
 既製品のブーツに風魔法を手っ取り早く付与するには、空を飛ぶことのできる鳥の羽を用いる方法があるらしい。

 空を飛べる鳥なら何でもいいというわけではない。できるだけ大きな鳥、あるいは高い魔力を持つ鳥型の魔物の羽なら効果も付与の成功率も上がるという。
 
 鳥型の魔物といえば、グリフォン、ガルーダ、ハーピーとか?

「素材としての鳥型の魔物の最高峰はフェニックスです」
「いや、それ取って来るの無理でしょ!?」

 そうですね、とあっさり言ってルシードはわずかにずり落ちたメガネを元の位置に戻す。
「野鳥だったら、せめてカラス以上の大きさでお願いします。理想はワシとかコンドルかな」

 コンドル!?
「ねえ、それって『コンドル』っていう名前の人間の髪の毛とかでは意味がないわよね?」

 ルシードが黙ってじっとわたしを見ている。
 何言ってるんだ、この人は…そう思われたに違いない。

「空を飛べるわけじゃないんでしょう?その人」
「はい、すみません…」

 もうっ、コンドルの役立たずっ!

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