円満な婚約破棄と一流タンクを目指す伯爵令嬢の物語
「わかったわ、とにかく羽を何枚か集めて来るわね。またね!」

 学院の敷地内やその周辺をウロウロして探してみたものの、普段何でもないときはよく見かけているような気がした鳥の羽が全く落ちていなかった。
 
 最悪、家にある羽ペンで代用しちゃう!?
 お母様の羽つき帽子の羽をむしり取るっていう手もあるわね。

 そこまで考えて、あれは一体何の鳥の羽なのかしらと思った。

 学院の外で待たせていたビルハイム家の馬車に戻ると、御者に羽ペンは何の鳥の羽なのか知っているかと聞いてみる。
「あれは、アヒルとかガチョウじゃないですかねえ」
 
 アヒルとガチョウ…飛んでいるのを見たことがないけど?
 飛行能力が高い鳥でないと意味がないから却下だわ。
 となると…。

「カモは空を飛べたかしら?」
「種類にもよりますが、この時期はちょうど北の方から飛んで渡ってくるカモがいますよ」

 渡り鳥!
 それは飛行能力バッチリだわ!

「いますぐそのカモのいる池に連れて行ってちょうだい!」

 興奮気味にお願いすると、御者はたじろいだ。
「まさか…池に入るとかおっしゃらないでくださいね?私が奥様に叱られるので」

「大丈夫よ、羽が欲しいだけだから」
「カモの羽をむしってどうなさるおつもりですか!?」

 カモを食べようとしているわけじゃないですからねっ!!
 

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