円満な婚約破棄と一流タンクを目指す伯爵令嬢の物語
 足掛け3日。
 ようやく風のブーツが完成する日。

 わたしは今日も意気揚々とルシードの元へと向かった。
 楽しみのあまり約束の時間よりも随分早く学院に到着してしまった。
 ルシードはいるかしら?と思いながら研究室をうかがうと、そこにはルシードとそれを囲むローブを着た男子生徒3人の姿があった。
 
 どうひいき目に見ても、友人同士で談笑しているという和やかな雰囲気ではない。 
 あれは完全に絡まれている。
 しかも、わたしのことで何か言われている!

「ステーシア・ビルハイムに取り入ったって何の得にもならないぜ。一度ダンスパートナーをしたからっていい気になるなよ?」
「もしかして、好きだったりするのか?やめとけよ、あんな女」
「王太子に捨てられそうになって頭おかしくなった女が好きとか、おまえ変わった趣味してんなあ」

 ルシードは何も言い返せずにオロオロしている。
 それをいいことに3人は口々に、わたしと親しくするなというようなことを気持ち悪い薄笑いを浮かべながら言い続けている。

 レイナード王太子殿下の婚約者であるステーシア・ビルハイムの頭がおかしくなったことが魔法科のほうまで広く浸透していることは喜ばしいことではあるけれど、そのこととルシードが絡まれているこの状況は別問題だ。

「頭がおかしくて悪かったわね。3人でつるんで弱い者イジメしているあなたがたも、相当頭悪そうだけど?」

 いきなり飛び込んできたわたしにギョッとしつつも、3人のリーダー格と思しき銀髪の男子生徒が食って掛かって来た。
「な、なんだとお!もういっぺん言ってみろ!許さないからな」

「何度でも言うわ。頭悪そうって言ったのよ。聞こえてる?あ・た・ま・悪そう!あなたに許してもらおうだなんて最初から思ってないけど、どうなさるおつもりかしら」

 銀髪は、顔を真っ赤にして怒っている。

 ふふん、星3タンクの挑発はいかが?腹立つでしょう?

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