円満な婚約破棄と一流タンクを目指す伯爵令嬢の物語
第9章 風のブーツ
ルシードの兄・ディーノをこらしめているうちに、ちょうど本来の約束の時間になった。
ルシードと一緒に「工房」と呼ばれている部屋へと移動して、その天井の高さに驚いてキョロキョロしていると黒いローブを手渡された。
これを着ろってこと?
首をかしげているわたしに、ルシードが説明してくれた。
こういったローブには、魔法を吸収・中和する作用があり、騎士が鎧を身に着けるのと同じなのだと。
「つまり、このローブも魔導具みたいなものなの?」
「そうです。これはブラックシープという特殊なヒツジから採集した毛を織った生地に魔導具科の生徒が加工を施して、服飾科の生徒がローブに仕立ててくれるんですよ」
知らなかった!
ローブって、ただ「俺は魔術師だぜぇ」ってかっこつけるために着ているんだと思っていたわ!
「で?この防護服を着ないといけないぐらい危険な作業をこれからするの?」
ローブの袖に手を通しながら聞くと、ルシードはにっこり笑った。
「大丈夫です。ただ着用が義務付けられているだけなので」
持参したブーツと、きれいに整えたカモの羽が作業台に置かれる。
わたしはルシードの作業の邪魔にならないように斜め後方に離れて様子を見守った。
ルシードがブーツの側面に羽をあてがい、角度を調整してから手のひら全体で押さえた。
一瞬、ブワッ!と上昇気流のような風が発生してルシードの髪を跳ね上げ、高い天井に吸い込まれていった。
ルシードと一緒に「工房」と呼ばれている部屋へと移動して、その天井の高さに驚いてキョロキョロしていると黒いローブを手渡された。
これを着ろってこと?
首をかしげているわたしに、ルシードが説明してくれた。
こういったローブには、魔法を吸収・中和する作用があり、騎士が鎧を身に着けるのと同じなのだと。
「つまり、このローブも魔導具みたいなものなの?」
「そうです。これはブラックシープという特殊なヒツジから採集した毛を織った生地に魔導具科の生徒が加工を施して、服飾科の生徒がローブに仕立ててくれるんですよ」
知らなかった!
ローブって、ただ「俺は魔術師だぜぇ」ってかっこつけるために着ているんだと思っていたわ!
「で?この防護服を着ないといけないぐらい危険な作業をこれからするの?」
ローブの袖に手を通しながら聞くと、ルシードはにっこり笑った。
「大丈夫です。ただ着用が義務付けられているだけなので」
持参したブーツと、きれいに整えたカモの羽が作業台に置かれる。
わたしはルシードの作業の邪魔にならないように斜め後方に離れて様子を見守った。
ルシードがブーツの側面に羽をあてがい、角度を調整してから手のひら全体で押さえた。
一瞬、ブワッ!と上昇気流のような風が発生してルシードの髪を跳ね上げ、高い天井に吸い込まれていった。