円満な婚約破棄と一流タンクを目指す伯爵令嬢の物語
 ルシードが棚から取り出した「魔力を計測する計器」とやらを手のひらに乗せられた。
 丸くて平べったい手のひらサイズの石板だった。
 これも魔導具なんだろうか。

 そのままじっとしていると、石板がじんわり熱くなって、水色の線と黄緑色の線が浮かび上がる。
 どちらの線も細くて、角度にすると水色が10度、黄緑色がそれよりも少し幅広の15度といったところだろうか。

「なるほど…ステーシアさんは、走ること以外に泳ぎも得意ですか?」

 まあ、そんなことまでわかるの?
 こくこく頷いた。

「水の魔力と風の魔力を持ってるんだな」

 まあ!知らなかったわ。
 筋肉しか持ってないと思ってたのに!

 この魔力を測る石板は、魔法系の家門は当たり前に一家に一台持っていて、子供たちは幼いうちから頻繁に計測されているらしい。
 我がビルハイム家は脳筋武闘派集団のため、魔力など測ったこともなければ興味すらない。

「でも、この程度の魔力であんなことにはならないはずなんだけど、風と水っていうのがカモと相性がいいんでしょうね。あとは、風の使い方が上手いのかな…すごいな、ステーシアさんは」
 ルシードが感心したように言った。


 
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