婚約者には愛する人ができたようです。捨てられた私を救ってくれたのはこのメガネでした。
◇◆◇◆

 このシャルコの街の生活になかなか慣れないエメレンスでもあったが、それでも近くにリューディアがいることだけが心の支えでもあった。彼女も慣れない生活を経て、今、この街に溶け込んでいる。それよりも驚いたのはヘイデンの適応能力だ。彼だってここでの生活は不便だろう。もちろんその妻であるイルメリも。しかも魔法公爵家のご子息、次期魔法公爵とまで言われている男が、庶民と同じように生活を送っている。
 そもそも魔導士団にこの採掘部隊が嫌われている理由が、現地での生活なのだ。魔導士になるような者は、家柄に恵まれている者が多い。ごく少数、平民から魔導士になりあがるような者もいるが、そのような者が地方に派遣される採掘部隊に配属される。

「レン……、どうかしました?」

 リューディアとエメレンスは、クズ石置き場の確認に来ていた。クズ石。魔力を充分に取り入れることのできないできそこないの魔宝石。
 リューディアはこれを見るたびに、まるで自分のようだと感じていた。

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