婚約者には愛する人ができたようです。捨てられた私を救ってくれたのはこのメガネでした。
「いや、何でもないんだ。ただ、ここに来て、もう一月も経つんだな、と。そう思っただけ」

 エメレンスが採掘部隊に異動し、シャルコの街に来てから一月が経とうとしていた。

「そうですね。レンがこちらに来て下さって、お兄さまも随分助かっていると、言っておりました。本当に、ありがとうございます」
 魔導士のローブを身に着け、フードを深くかぶり、レンズの大きい眼鏡をかけているリューディアが深く頭を下げる。

「いや、そんな礼を言われるようなことじゃないよ。ボクもこの街に来て学ぶことは多い。魔宝石によって栄えている街であることはよくわかった。だが、その魔宝石を採り尽くしてしまったらこの街はどうなるのだろう、という不安がある」

「はい。それをわたくしも今考えておりまして。このようにたくさんのクズ石ももったいないと言いますか。もしかして、他にも使い道があるのではないか、とそう思っているのです」

 そこでリューディアはしゃがみ込み、大量に捨てられているクズ石の一部を掴み取った。色が汚い、形が歪、取り込める魔力が少ない、だから魔導具に利用できない。

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