婚約者には愛する人ができたようです。捨てられた私を救ってくれたのはこのメガネでした。
「レンには心当たりがあるのですか? そういった人物に」

「あると言えばあるし、ないと言えばないし。あまり不確かな情報でディアを混乱させたくはないけれど、君は賢いから心配はないかな」
 そこでエメレンスがにっこりと微笑んだため、リューディアはもう一度首を傾げた。

「なぜ、ヘイデンがこの現場に派遣されて、ここで仕事をしているのか。ディアはわかってる?」

 首を横に振る。なぜ兄がここに来ているのか。それは、魔宝石を採掘するためだと思っている。だからそれ以上の深い理由は知らない。

「一時期、この現場で採掘できる魔宝石の量が減ったんだ」

「ですが、減るような要因はありませんよね。それは今も同じだと思うのですが」

「そう。実際の採掘量は減っていない。だけど、報告にあがってくる採掘量が減っている。それがどういうことを意味しているのか、わかるかい?」

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