婚約者には愛する人ができたようです。捨てられた私を救ってくれたのはこのメガネでした。
 調査を終えた二人はすぐさま報告書をまとめ、それをヘイデンへと提出した。やはり彼は知っていたのだろう。あの崩落事故が意図的に仕組まれていたことに。苦虫を潰したような険しい表情で、その報告書を読んでいた。
 それを読み終えたヘイデンは、テーブルの上にパサリとそれを置いた。

「まさか、残留魔力が検出されるとはな」

「崩落事故が起こったのが、三月(みつき)前。それでも残っているということは、かなり強い魔力が使われた可能性が高いですね」

「ああ。なかなか現場の安全確認が終わらず、調査が入るまでに時間がかかってしまったが。こんなことなら、何より優先させるべき案件だったのかもしれない」

 ソファに座っているヘイデンは腕を組み、うぅむと唸った。その向かい側にリューディアとエメレンスは並んで座っているが、先ほどからは男性二人が会話を交わしている。

「この現場から魔導士団を離れさせることが狙いだったのかもしれませんね」
 そこでリューディアが口を挟んだ。
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