婚約者には愛する人ができたようです。捨てられた私を救ってくれたのはこのメガネでした。
「こちらで解析したいから、現物と研究部の人間を寄越せ、と。そう、シオドリックに連絡をする。本来であれば俺とディアがあちらに行った方が手っ取り早いだろうが、この状況でここを空けるのは不安だからな。だから、向こうから来てもらう」

 それでもその日は、魔宝石の過去の採掘についての資料を探し、まとめることで時間を要した。合間に、現場の安全確認を行う必要もあったため、定時を過ぎても仕事は終わらなかった。
 リューディアが、終わった、と机に突っ伏した時には、外はもう真っ暗になっていた。

「ディア、遅くまでお疲れ」
 突っ伏したリューディアに温かいお茶を持って来てくれたのはエメレンス。彼も、今回の事故について、原因となりそうな魔宝石についての調査を協力してくれた一人。リューディアが定期安全確認に行けそうにないときには、代わって現場確認へと足を運んでくれた。だからこそ、今日の調査が思ったよりスムーズに進んだのだ。

「ありがとう、レン」
< 123 / 228 >

この作品をシェア

pagetop