婚約者には愛する人ができたようです。捨てられた私を救ってくれたのはこのメガネでした。
 つまり、この応接室にはヘイデンとシオドリック、そしてリューディアの兄弟三人のみ。ここにミシェルがいれば、久しぶりに四人が揃ったのに、残念ながらその真ん中の兄は王都にいる。

「シオ兄さま。わたくし、ここではリディアと名乗っております。イルメリお義姉さまの妹ということになっております」

「うん。それはオレもヘイ(にい)から聞いた。だから、オレもリディアと呼ぶから」

「あ、そうだお兄さま。これ、お義姉さまから預かってきた資料です」

 思い出したようにリディアはヘイデンに資料を渡す。

「ありがとう。イルメリには、予想採掘量と実際の採掘量、そして選鉱した結果良品として判断された魔宝石の量をまとめてもらっていたんだ」

 リューディアはヘイデンの隣に腰をおろした。

「そして、これが爆発した魔導具だよ」
 シオドリックが言うと、魔導具をテーブルの上に置いた。煤けていて汚れているため、テーブルの上には大きな布地が敷かれている。

< 139 / 228 >

この作品をシェア

pagetop