婚約者には愛する人ができたようです。捨てられた私を救ってくれたのはこのメガネでした。
「シオ兄さまは、こちらの魔導具から魔宝石を取り出したのですか?」
 リューディアの質問にシオドリックは首を横に振る。
「取り出して失くすと困ると思ったから。これから、初めて分解する」
 鞄から工具類を取り出したシオドリックは、白の綿手袋をはめてから器用に魔導具を分解し始めた。煤けた外装を外して、むき出しになった魔導回路から、(コア)となる魔宝石を取り出す。
 コロン、とそれはテーブルの上に転がった。

「シオ兄さま。この魔宝石。もう少し詳しく見てもよろしいですか?」

「ああ。かまわないよ。手が汚れるからこれを使って。あとは、ルーペが必要かな?」
 シオドリックから手袋とルーペを手渡されたリューディアは、鑑定士のようにじっと魔宝石を観察した。それが終われば、ふぅと息を吐いて、魔宝石とルーペをテーブルの上に置く。

「やはり、これはクズ石です」

「なんだって?」
 腰を浮かしそうになったのはシオドリック。ヘイデンはこの結果を予想していたのだろう。どっしりと構え、腕を組んで難しい顔をしていた。
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