婚約者には愛する人ができたようです。捨てられた私を救ってくれたのはこのメガネでした。
 シオドリックは魔宝石を手にすると、空いている方の手でルーペを取り、先ほどのリューディアと同じようにそれを観察する。

「この魔宝石は形が整っておりません。魔力の方は充分とは言い難いですが、通常の八割程度は備えています。ですが、形が整っていない魔宝石は、魔力制御が不安定になります。この魔宝石では、この魔導回路を動かすための魔力を制御することができません」

「本当だ……。これ、正規の魔宝石じゃない……」

「シオ兄さま。実はお兄さまには以前から報告をしていたのですが、どうやらここのクズ石が盗まれているようなのです」

「え?」
 そこでシオドリックは手にしていたルーペと魔宝石をテーブルの上に置いた。魔導具爆発事故の原因は、この魔導具に使用されている魔宝石で間違いない。だが、この魔宝石が正規品ではなくクズ石であった、ということは。

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