婚約者には愛する人ができたようです。捨てられた私を救ってくれたのはこのメガネでした。
「シオドリック。この魔導具を売った商会から製造元を割り出すことはできるよな?」

「もちろん。商会と製造元には、別の人が調査に行っている。って、シェル兄だけどね」

「あのミシェルが? 本当か? てことは、魔宝石の入手ルートは割り出せるな」
 ヘイデンの呟きに、シオドリックは頷く。それでも、リューディアの表情は暗い。

「ディア。どうかしたのか?」

「お兄さま、シオ兄さま。このシャルコの採掘現場では、いろいろなことが起こり過ぎているとは思いませんか?」
 ヘイデンは眉根を寄せる。シオドリックは「どういうことだい?」と尋ねる。
「まず。わたくしがここでお仕事をするようになったきっかけですが、それは四月(よつき)ほど前にこの採掘現場で崩落事故が起こったことです。その事故で何人かの魔導士たちが現場を離れております。ですが、調査を進めていくうちに、その崩落事故も意図的に起こされたことがわかりました」

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