婚約者には愛する人ができたようです。捨てられた私を救ってくれたのはこのメガネでした。
「これだろうね」
 ヘイデンが、鞄の中から書類を差し出した。それは昨日、エリックがエメレンスに手渡し、そこからヘイデンへと渡ったもの。
「恐らく敵の狙いはこれ。採掘師たちが保管していた過去の採掘量の記録の写し。これがあると、虚偽の報告の証拠になってしまうからね。シオドリック、できればこれを君に預けたい。あちらに戻るときに持っていて欲しい。だが、これが狙われているのは事実。肌身離さず持っているように」

「なかなか背筋が凍るような代物だね。ドキドキが止まらないよ。ああ、でもこれはシェル兄が好きそうな代物だ」
 と言うシオドリックは、どこか楽しんでいる様子にも見える。
「まあ、ここまできたら。この現場は不正に溢れているってことだね」

「残念ながらそのようだな。だが、俺がここに来たことによって、それが今までのようにいかなくなった。と、同時にそれを暴かれそうになっている。相手としては焦るしかないだろう」

「それに、オレたち第一研究部まで現場にきちゃったからね。今頃、相当焦っているはずだよ」
 シオドリックは楽しそうに笑う。
「もう少し相手を刺激するような行動をしてから戻った方がいいかな?」

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