婚約者には愛する人ができたようです。捨てられた私を救ってくれたのはこのメガネでした。
◇◆◇◆

「ブルース……」
 クズ石置き場に膝をついて、そこからクズ石を自分の鞄に入れようとしているブルースは、目の前の二人を見上げていた。その二人とは――そう、エメレンスとリューディア。

「あ、レンさん、リディアさん。おはようございます……」

 ブルースは平静を装うとしているのだろう。何事もなかったように、表情を整えて、朝の決まりきった挨拶を口にする。

「あ、ああ。おはよう……」
 そんなブルースに気を抜かれてしまったのか、エメレンスも朝の挨拶を口にした。

「ブルースさん……。何をなさっているのでしょうか」
 男二人のやり取りを気にも留めず、リューディアは鋭く彼を射抜いた。問われて急におどおどとし始めるブルース。やはり、他愛のないことでその現実から目を逸らせようと思ったのだろう。

「ブルースさんの鞄に入っているもの。それはクズ石ですよね。クズ石を鞄に入れて、どうなさるおつもりですか?」

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