婚約者には愛する人ができたようです。捨てられた私を救ってくれたのはこのメガネでした。
 カチャリとカップをテーブルに戻してからリューディアは尋ねる。

「理由を、お聞きしてもよろしいでしょうか」

 ああ、と腕を組んで足を組んでいるモーゼフは大げさに顔を縦に振る。

「君が、不細工だからだ。いつも眼鏡をかけていて、私の隣に相応しい女性であるとは思えない。パーティでも舞踏会でも。そのような醜い眼鏡をかけた女性が私に相応しいと、本当に思っているのか?」

 リューディアは答えることができなかった。まさか、眼鏡をかけていることを指摘されるとは思っていなかったからだ。

「でしたら。パーティのときに眼鏡を外せば、モーゼフさまは満足されるのでしょうか?」
 少し震える声で、リューディアは尋ねた。声が震えたのは、眼鏡を外さなければならない状況を想像したから。

「いや。わざわざそのようなことをする必要は無い。もう、君と私は婚約者同士ではないのだから。共にパーティに参加することも無くなるだろう。君は好きなだけその醜い眼鏡姿を晒すがいい」

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