婚約者には愛する人ができたようです。捨てられた私を救ってくれたのはこのメガネでした。
エピローグ
「エメレンス。君の方が王太子に相応しかったのではないか?」
 この場にはいるのは兄と弟の二人きり。リューディアは今、王妃と共にお茶会を楽しんでいるところ。

「いえ、ボクは王太子、ましてこの国の国王には相応しくありませんよ」
 二人はテーブルを挟んで向かい合って座っていた。血を分けた兄弟。同じような顔立ち。

「私は、あの女に騙されるような愚かな男だ」

「ええ。兄上は愚かで純粋な男です。ですが、ボクより狡くて容赦のない男だ」
 そこでエメレンスが笑えば、モーゼフも冷たく笑う。
「気付いていたのか?」

「ええ。愚かな振りをしながら、人をどう操るかを考えている。ですが、あのフリートという女性を利用しようとして利用されてしまうのは、いかがなものでしょう」
 そこでエメレンスは口角をあげた。

「ああ、それは私自身の力量の見込み違いだった。まさか、彼女の魔力があれほどのものとはな。あれは魔法公爵家をしのぐような代物だった……」
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