婚約者には愛する人ができたようです。捨てられた私を救ってくれたのはこのメガネでした。
◇◆◇◆

 後日、ヘイデンが約束通り妻であるイルメリと二人の息子を連れて、このコンラット公爵の屋敷を訪れていた。魔導士団でかつ採掘部隊の部隊長を務めている彼は、ボワヴォン山脈の麓にある街シャルコの官舎に家族で常駐している。妻であるイルメリも魔導士団採掘部隊の所属であるため。

「久しぶり、ディア。元気そうで良かったわ。あなたの誕生日パーティには出席できなくてごめんなさい。遅れてしまったけれど、プレゼントよ」

「ありがとうございます、お義姉さま」

 リューディアは半年ぶりに義姉と会った。先日の誕生日パーティに出席できなかったのは、義姉であるイルメリだけである。彼女は長兄であるヘイデンより二つ年上で、今年で三十になるところ。それでも、張りのある肌とみずみずしさは、リューディアのそれよりも輝いているかもしれない。リューディアから見たら大人の女性、きらきら輝く女性、働き者の女性、そして憧れの女性の一人でもある。
 そして今、リューディアは義姉イルメリからの熱い抱擁を受けたところだった。

「あら、ディア。また眼鏡を変えたの? 今度はレンズが大きいのね。あなたの可愛い顔の半分を隠してしまっているわ」
 義姉もリューディアの顔を可愛いと評してくれる一人。だが彼女もリューディアの家族の一人だ。何しろ、兄の妻。リューディアからみたら義理の姉。
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