婚約者には愛する人ができたようです。捨てられた私を救ってくれたのはこのメガネでした。
 以前、モーゼフに可愛くない、ブス、不細工と言われた時に、両親や兄たちはそんなこと言わないと反論したところ「それは親の欲目って言うんだ」と言われてしまった。家族だからこそ、リューディアが可愛く見える魔法にかかっているんだ、と。
 だからこの義姉も、恐らくリューディアが可愛く見える魔法にかけられているのだろう、と思っている。

「お兄さまとお義姉さまも。二人そろって、今日はどうされたのですか?」

 応接室のソファに座りながらリューディアは尋ねた。一番上の兄夫婦は、魔導士団の採掘部隊に所属しているため、シャルコにある官舎に家族四人で暮らしている、というのはリューディアでも知っている。

 侍女が三人の前にお茶を並べたのを見送ってから、早速ヘイデンが口を開いた。二人の子供たちは、両親に預けてきた。久しぶりに孫に会えた公爵夫妻は、きっと目尻を下げてデレデレになって喜んでいることだろう。

「ディア。実は今日、君に頼みたいことがあって来たんだ」

「お兄さまの頼みでしたら、喜んで引き受けます」

「どんな内容でもか?」

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