婚約者には愛する人ができたようです。捨てられた私を救ってくれたのはこのメガネでした。
「もし、ディアが自分の顔を理由に躊躇っているのであれば、魔導士団はあなたの顔を気にしない人の集まりであることっていうことを伝えておくわ。あの人たち、他人に興味が無いから」
 他人に興味が無い、という言葉でリューディアの身体がぴくりと震えた。なんて魅力的な言葉だろう。

「それに、魔導士団のローブにはフードもついているのよ。それは、採掘現場で落下物などから頭を守る役目もあるんだけれど。深くかぶれば顔も良く見えないの。それから、あの採掘場で働く採掘師たちも、自分たちのことで手いっぱいだから、他人なんてどうでもいい人たちの集まりなのよ」
 それを開けてみて、と義姉が指し示したのは先ほどリューディアに誕生日プレゼントとして手渡したもの。リューディアは膝の上にそのプレゼントをのせると、ゆっくりと包みを開ける。

「これは……」

「魔導士団のローブよ。絶対に、ディアに似合うわ。ねえ、お願い。あなたのその能力(ちから)を私たちのために貸して欲しい。私たち、ではなくこの国の民たちのために」

「民たちのために?」

「そう。民たちのために」

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