婚約者には愛する人ができたようです。捨てられた私を救ってくれたのはこのメガネでした。
「採掘現場は危険も伴うから、魔導士たちはこのフードも被るのよ。そしてこうすれば、顔はよく見えないでしょ?」

「このような状態で、どの人が誰かってわかるのですか?」
 皆、同じような黒いローブを羽織り、フードを被っていたら、魔導士団の人間の区別がつかないのではないだろうか、というのがリューディアの質問だ。

「ええ、そうね。普通の人だったら、簡単に見分けることができないわね。だけど、私たちは個人の魔力を探るから大丈夫よ」

「魔力を探る?」

「ええ。ディアはそこまでは教えてもらっていないのかしら?」

 はい、とリューディアは頷いた。すると、イルメリは嬉しそうに微笑んで。
「だったら、私たちが教えてあげるわ。だから、ディア。魔導士団で働かない?」
 イルメリはこの義妹が「はい」と言うまで、しつこく誘うつもりだった。むしろ「はい」という答えをもらうまではここから立ち去る気も無い。

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