婚約者には愛する人ができたようです。捨てられた私を救ってくれたのはこのメガネでした。
「ディア。俺たちと一緒に働いて欲しい。民たちのために」
 民たちのために、という兄からの止めの一発に背中を押されたのか、リューディアは首を縦に振っていた。

「本当に? ディア」
 普段より高い声で喜んだのはイルメリ。
「はい。こんなわたくしでも、みなさんの役に立つことができるのであれば、と……」

「ありがとう」
 この日リューディアは、二度目の熱い抱擁を義姉から受けた。
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