婚約者には愛する人ができたようです。捨てられた私を救ってくれたのはこのメガネでした。
 そして彼の指は中指も立った。
「次に採鉱(さいこう)と呼ばれる仕事だ。主に俺とイルメリがそれについている。これもその名の通り、原石を採るための仕事だ。だが俺たち魔導士団が担当するのは採掘そのものじゃない。採掘がスケジュール通りすすめられるように調整したり、採掘現場の安全を管理したりするのが俺たちの仕事。だから、前回の崩落事故は、まあ、俺の失態だ……」
 そこで悔しそうにヘイデンは顔を歪める。
「現場で実際に採掘にあたっているのはシャルコの街の人間だ。彼ら、少し頑固なところはあるが、まあ、あれなんだ。職人気質って呼ばれるようなあれだな。だけど、腹を割って話せば、悪い奴らじゃない。口は悪いが」
 リューディアはこの兄をそこまで言わせてしまう現場の人たちに興味を持ったのだが、それでも少し不安になってしまう。

 ヘイデンの立てている指が再び三本になった。
「最後が選鉱(せんこう)と呼ばれる仕事だ。これは採掘した魔宝石を選定する仕事。天然ものだから、不純物が混ざっていたり、形が崩れていたりする。そういったものを選別して取り除くのが選鉱の仕事だ。イルメリはもともと選鉱を専門としていたが、今回の人手不足によって、選鉱から採鉱に異動している」
 イルメリの名前が出てきたときに、彼女はちょっと苦笑していた。何か、あるのだろうか。

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