婚約者には愛する人ができたようです。捨てられた私を救ってくれたのはこのメガネでした。
「そういうことだな、お嬢ちゃん」
 先ほどのガイルが両手にお盆を持って隣に立っていた。
「ほらよ、卵とじ丼四つ。小さいお椀はこっちのチビたちの分だ」

「チビじゃないもん、ミルコだもん」
「ちびじゃないもん、ヴィルだもん」

「おお、そりゃおっちゃんが悪かった。ミルコとヴィル。熱いから父ちゃんと母ちゃんに分けて貰えよ」

「気持ち悪がらないでくださいね。お父さんたら、小さな子供は好きみたいなんです。でも、大人は自分のことを馬鹿にしてくるから嫌いなんですって」

「おい、スージー。余計なこと言ってんな。一応、俺の上官なんだ」
 スージーとは、スープを運んできたこの少女の名だろう。会話から察するに二人は親子。
「ええ、一応上官のその一です」
「同じく、一応上官のその二です」

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