婚約者には愛する人ができたようです。捨てられた私を救ってくれたのはこのメガネでした。
「これ。ものすごく美味しいです。たまごがふわっと溶けて。ほっぺたも落ちそう」
 初めて味わう食感に、リューディアは興奮してしまった。

「そう言ってもらえて嬉しいわ、あれ?」
 他の客に水を出し終えたスージーがリューディアの言葉を耳に入れたようだ。嬉しそうにニコニコと笑っている。
「リディアさん、あなた。眼鏡を外したらものすごく美人なのね。そりゃそうか、お姉さんも美人なんだから」
 スージーは眼鏡を外したリューディアの顔をまじまじと見つめてくる。リューディアは恥ずかしくなって、再び眼鏡をかけてしまった。
「あら、残念。でも、眼鏡が無いとよく見えないもんね。視力が悪いっていうのも、大変よね」
 スージーはそう思っているようだ。視力が悪いから眼鏡をかけている。大抵の者はそう思うだろう。視力の矯正が眼鏡の目的でもあるのだから。
 リューディアが黙々とご飯を食べているうちに、この食堂には次から次へと客が訪れてきた。その中にはヘイデンとイルメリと一緒に仕事をしているような者たちもいて、ヘイデンの姿を見つけては「隊長」「部隊長」と声をかけてくる。
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