婚約者には愛する人ができたようです。捨てられた私を救ってくれたのはこのメガネでした。
◇◆◇◆

 恐らくモーゼフが立太子するだろうと思っていたエメレンスは、その兄を支えるために王立魔法学院卒業後は、魔導士団へと入団した。学院に通ったのも、もしかしたらリューディアと机を並べて勉強ができるかもしれないという淡い期待があったから。だけど、彼女は学院に通わなかった。あの屋敷で優秀な家庭教師に囲まれて勉強に励んでいたようだ。

「シオドリック」

「これは、エメレンス殿下」

 魔導士団の建物は王城の敷地内にある。ここの建物内で働いているような魔導士たちは研究職が主だ。離れの図書館へ向かおうとしていたところ、エメレンスは向こうから歩いてくるシオドリックに気付いた。彼はリューディアの二つ年上の兄。そして、モーゼフとは同い年。学院時代もそれなりに仲良くやっていた、とは聞いている。

「リューディアは元気にしている?」
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