婚約者には愛する人ができたようです。捨てられた私を救ってくれたのはこのメガネでした。
「え? リューディアが採掘部隊としてシャルコにいるって、本当に?」

「嘘をついているつもりはないのですが、嘘のように聞こえますよね」
 ははっとシオドリックは笑う。自分で口にしたシオドリックでさえ、あの妹がシャルコの街で採掘の仕事をこなしているとは嘘のように思えているからだ。

 突然、長兄であるヘイデンがあのシャルコから戻って来たと思ったら、リューディアを採掘部隊で働かせたいと言い出した。
 リューディアを溺愛している父親は断るだろうと思っていた。だが、そうはしなかった。全ての判断をリューディアに任せる、と。そして、人の前に姿を晒すことを非常に怯えているリューディアこそ、その話を断るだろうと、シオドリックもミシェルも思っていた。だから彼女がそれを断った後は、魔導士団の研究職の方に誘うつもりだった。
 今まではモーゼフの婚約者兼王太子妃教育というものが枷になっていて、彼女を魔導士団に誘うことができなかったのだ。だがその枷が外れた今、魔導士である兄たちは常々彼女を魔導士団に欲しいと思っていた。

 ――リューディア様は、百年に一度の逸材です。リディア神の生まれ変わりと言っても過言ではない。

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