婚約者には愛する人ができたようです。捨てられた私を救ってくれたのはこのメガネでした。
◇◆◇◆

 リューディアもこのシャルコに来て十日も過ぎれば、お手伝いさんと一緒に掃除と洗濯、料理もできるようになっていた。元々学習意欲の高い子であり、さらに素直な性格が、新しい知識をぐんぐんと吸収するのに役立っているようだ。ヘイデンとイルメリが仕事をしている間は、ミルコとヴィルは子供たちがたくさん集まっている場所にお手伝いさんと共に行っているようだ。そこには、同じように両親が仕事をしている子供たちが集まっていて、一緒に遊んだりおやつを食べたり昼寝をしたりしている。つまり、託児所。

 一月も過ぎた頃、採掘師たちからの呼び名は「お嬢ちゃん」から「リディアちゃん」へと変わっていた。イルメリも「姫さん」から「イルメリさん」へ。




 それは、とある日の出来事。
 採掘師たちが採掘のためにもう少し奥の採掘場へと進もうとしたとき。

「そちら、地盤が緩んでいるので進んではいけません」
 魔導士のローブを纏い、落下物から頭を守るためにフードをしっかりとかぶり、そして眼鏡をかけたリューディアが、ガイルへと声をかけた。驚いたのはガイル。
「だが、ここを行かなきゃ、あっちの採掘現場へ行けないぞ?」

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