婚約者には愛する人ができたようです。捨てられた私を救ってくれたのはこのメガネでした。
「はい。ですから、そちらの坑道はわたくしたちの方で整備しますので、今日は西側の現場の採掘をお願いします。今日の予定は西側の現場での採掘になっているはずです」

「嬢ちゃんの言うことを、おいそれ聞いてられっかって。俺たちは毎日決められた量を採掘しないと、金がもらえないんだよ。西の現場、粗方掘っちまったから、もう、原石は出ないんだよ」
 と言い出したのは、採掘師の一人。
「いいえ。まだ、掘っていない箇所があります。西側の五号区。今日はそちらの現場をお願いします。あちらの現場への道は、今日中にわたくしたちが整備しますから」
 リューディアは同じことを口にした。それでも採掘師たちはリューディアの言うことを聞こうとはしない。採掘師の幾人かは、リューディアが進んではいけないと口にした坑道へと向かう。パラパラと頭上からは、粉のように土や小石が落ちてきている。人の歩く振動によって、その量は次第に増えてきているようにも見えた。

 バラララララッ……。

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