婚約者には愛する人ができたようです。捨てられた私を救ってくれたのはこのメガネでした。
「ですから、そちらの坑道に進んではならないと言ったではありませんか」
 埃の中からゆったりと歩いてきたリューディア。足元には彼女が庇ったであろう採掘師が一人。

「おい、大丈夫か? 怪我をしているのか?」
 ガイルは慌てて倒れている採掘師の元へと駆け寄る。

「すみません。この方が巻き込まれそうでしたので、わたくしの魔法でちょっと飛ばしてしまいました」

「そ、そう。そうなんすよ、師長。この嬢ちゃん、俺らのことを助けてくれたんです」
 様子を見ていた他の採掘師がガイルに説明する。
 ガイルは倒れている部下とリューディアを交互に見つめていた。

「そうか、ありがとう。リディア嬢……」
 ガイルがリューディアのことを嬢ちゃんと呼ばなくなったのは、これがきっかけだ。

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