婚約者には愛する人ができたようです。捨てられた私を救ってくれたのはこのメガネでした。
「おい、どうした。何が起こった」
 そこへ騒ぎを聞きつけたヘイデンとイルメリも駆けつけた。

「お兄さま。また、崩落が起こりました。どうやら以前の担当者がやみくもに掘り進めた結果だと思われます。わたくしたちはこれから、このような危険な個所を把握して、対策を行う必要があると思うのですが」

「あ、ああ。そうだな。それよりも、怪我は無いのか?」

「はい。採掘師のみなさんに怪我はありません」

「それもこれもリディア嬢のおかげだ、隊長さん」
 ガイルがリューディアのことを嬢ちゃんではなく、リディアという名で呼んだことにヘイデンも気付いた。

「そうか。怪我が無ければ何よりだ。そちらの現場は危険だから、今日は西側五号区の現場の採掘を頼みたい」
 ヘイデンが口にしたこちらの現場とは、先ほどリューディアが指示した場所と同じ場所。

「わかった。隊長さんの命令なら仕方ないな。お前たち、今日は西側五号区の採掘だ」

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