婚約者には愛する人ができたようです。捨てられた私を救ってくれたのはこのメガネでした。
 ガイルが言えば、他の採掘師たちはその言葉に従う。それだけ採掘師長の言葉には重みがある。別な現場へと移動する採掘師たちを見送ってから、ヘイデンは崩落した場所の確認を始める。イルメリも同様に。

「ディア。君はここが危険であると、事前にわかったのか?」

「え、あ、はい。なんとなく。お兄さまに見せていただいたこの坑道の地図を確認しまして、それから今までの採掘の状況と、この地層。そこから、そろそろここが崩れそうだと思っておりました。今日は、採掘師たちがこちらに来てしまったので、いつも以上に負荷がかかって崩れてしまったものと思われます」

「なるほど」
 ヘイデンは腕を組んで崩れた箇所を見上げる。
「やはり、お前には採鉱の才能があるよ。お前自身に怪我はなかったか?」

「あ、はい。フードもかぶっておりましたし、眼鏡もかけておりましたから」
 砂埃が飛んできたときに、この眼鏡がその埃が目に入るのを防いでくれた。眼鏡はリューディアの顔を隠すほかに、このように危険な物から目を守ってくれる効果もあったようだ。さらに今回はレンズが大きく、彼女の顔半分を隠してくれるようなデザイン。それがなおさら功を奏したようだ。この眼鏡をプレゼントしてくれたエメレンスには感謝しかない。と、同時に何かしら御礼を、という気持ちも沸いてくるのが不思議だった。
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