婚約者には愛する人ができたようです。捨てられた私を救ってくれたのはこのメガネでした。
「どうかしたのか、ディア」
 ヘイデンの言葉でふと我に返る。

「いいえ。それよりもお兄さま、まだこの坑道には危険な個所がたくさんあるのです。恐らく、前任者が何も考えず、採掘量を優先させて掘った結果であると思っております。ですから、わたくしはこの坑道の危険な個所を確認し、採掘師たちのスケジュールに影響が出ないように、危険個所を整備していきたいと思っているのですが」

「そうだな。それは俺たち採鉱を担当する者たちの仕事だな。メリー、ディアとこの坑道の危険個所、そうだな、すぐに崩落に繋がりそうな場所の確認をお願いしたい。いつもは、採掘している箇所の確認しかしていなかったからな。あのように、採掘量を気にする採掘師たちにとっては、他の採掘現場の方が魅力的に見える場合もある。だからこそ、俺たちがどの現場でどれくらいの採掘ができるのかということも事前に見積もる必要があるのだが。そうだな、探鉱の者にあらためて採掘量の予測量を出してもらおう」

 そこで、ヘイデンは「おい、エリック」と部下の名を呼んだ。どうやら彼も騒ぎを聞きつけてこちらにきてくれたようだ。

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