婚約者には愛する人ができたようです。捨てられた私を救ってくれたのはこのメガネでした。
 この日以降、採掘師たちの態度が一変する。それが顕著に表れたのが、リューディアとイルメリに対する呼び方だった。それに採掘師たちも、採掘の場所について、おかしいと思うようなことをヘイデンに報告するようになり、無闇に掘るということをやめるようになっていた。事前に採掘師と採鉱担当で話し合いを行い、探鉱からあがってきた予想採掘量を元に掘る場所や方法を決める。さらに危険個所については、わかりやすく目印をつけることと、立ち入り禁止地区には許可なく立ち入らないことと。
 こうやって規則を決めて並べ立てると、すごく当たり前のようなことのようにも感じるのだが、その当たり前ができていなかったのがこの現場だったのだ。
 そしてさらにヘイデンが採掘師やこの現場で働く魔導士たちのために、彼らの処遇も見直した。というのも、あのガイルが、ヘイデンがこの地に赴任してから四回も倒れたからだ。倒れた際に頭を打ち、すこし側頭部に怪我を負ってしまった。イルメリがそれの治療を行いながら、ヘイデンはガイルに言った。
「休め」
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