婚約者には愛する人ができたようです。捨てられた私を救ってくれたのはこのメガネでした。
◇◆◇◆

 リューディアはいつものように、坑道の様子を見回りしつつ危険個所の点検をしようと事務所を出ようとしたところ、ヘイデンに声をかけられた。
「ディア、今日は北側の安全確認に行くのか?」

「はい。そろそろ北側も採掘する頃だと思いますので、先に確認をして、危険個所は対策してこようと思っています」

「ディア、一人で行くのは危険だ」
 と口にしたヘイデンではあるが、今、彼女に付き合えるような人材がいないのも事実。他の魔導士たちは、それぞれ担当の仕事をこなしている。それにヘイデン自身もこれから人と会う約束がある。

「危険な個所には近づかないようにします。それに、危ないと思ったらすぐに引き返しますから」
 と言うリューディアの言葉を受け入れてしまったヘイデンは、彼女が一人で坑道の見回りをすることの許可を出してしまった。
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