婚約者には愛する人ができたようです。捨てられた私を救ってくれたのはこのメガネでした。
「ディアが、この採掘部隊で仕事をしていると聞いて。驚いたよ」

「ええ、わたくしも驚いております。このような立派な仕事、わたくしに務まるかと思っておりましたが、他の魔導士や採掘師たちに支えられ、なんとかこなせています」

「王都にいたときよりも、顔色もよさそうだし。それに少し、健康的になったような気がする」
 しばらく会わないうちにリューディアも身体付きもふっくらとして丸みを帯びてきたように感じた。

「そうですか?」

「うん。何よりも、こうやってボクとの会話を楽しんでいるディアがいる。あちらにいたときは、いつも俯いていたよね。こんな風にボクの顔を見てくれなかった」

「そう、でしたか?」

「うん。だけど、今のディアの方が、以前よりも何十倍も魅力的だ。君はそうやって笑っていた方がいいよ」

 魅力的。エメレンスにそう言われてしまっては、恥ずかしくてリューディアはただ頬を染めるだけ。
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