婚約者には愛する人ができたようです。捨てられた私を救ってくれたのはこのメガネでした。
 会話も途切れ、気まずい空気と時間が流れる。

「あ、えと。ディア。その、仕事について教えてくれないか?」
 この居たたまれない空気から逃げ出すかのように、エメレンスが尋ねた。

「あ、はい。そうですね。では、今日の仕事の内容について説明します。あ、それよりも先に。その、採掘部隊の主な仕事というのは、お兄さまからお聞きになりましたか? その、仕事も大きく三つに分かれているということを」

「うん。聞いた。探鉱、採鉱、選鉱の三つでしょ。そしてボクたちは採鉱の担当だ」

「はい。そうです。採掘のための安全管理やスケジュール調整を担当します。今日はこちらの坑道、これから採掘師たちに採掘してもらうために、先に安全確認を行うところです。採掘現場は、ここを進んだ奥の右側になります。まずはそこまで行ってみますね」

 先ほど崩してしまった道を避けて、先に進む。

「ここはまだ、手つかずの採掘現場です。これから、採掘してもらう場所になります」
 この先は行き止まり。というのもこの先を掘ってもらう必要があるから。
「わたくしたちの仕事は、安全の維持のために魔法を使うこともありますが、どちらかというと地学、統計学といったものを使う方が多いかもしれませんね」

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