転生したら、シンデレラの姉だった件
「…あのぅ…ルリア義姉様 (ねぇさま)?
…私を、た、助けてくれるんですか…!?」
…エラさんの声で、考えを巡らせていた私は、慌てて我に返った。
「…ええ、勿論ですわ!
…私は、あなたのー姉。
…なのに、あなたをいじめてしまーしまいましたわ!
今思い返せば、とても、酷いことを…!」
…慣れないっ!
このルリアという人の口調、全っっ然、慣れないよぉー!!
…こうなった以上は、エラさんに、全てを話す方が良いだろうか?
…実は、私は、とある国から急に来た、転生者でして…!
…なぁーんて、気軽に言えたら、楽なのにぃー!!!!
それに、
「とても酷いことを…!」
じゃなくて、
「あなたにとって残酷で、酷すぎるいじめをー。
あぁ、何という許されがたい行為を、私共はしていたのでしょう!?」
って、きっぱりと、そう言う積もりだったのにぃー!!
…道理でエラさんに、
「…本当、なのですよね…?」
ーと、疑いの眼差しで見つめられる訳である。
…こんな視線で見つめられたら、この世の全ての男性は…鼻血を出して、卒倒してしまうのでは!?
…と私が思ってしまうくらい、彼女は数分間、私の顔を凝視していたけれど…。
「…ルリア義姉様…!
うううっ…あなたのお心遣いに、感謝いだじます!」
ーやがて…
「…えっ、エラさん…!?
…あ、あのっ…!?」
困惑の声を出す私の目の前で、何故かうるうると、号泣し始めたのだ…!
…感謝を述べるその顔も、段々と、涙と鼻水で汚くなっていく…。
ーあなたは一体、どこまで天使なのっ!?
エラさん…!!
私は心の内で、エラさんに、思いっ切り突っ込む。
自分をいじめ倒した筈の姉が、協力を申し出るくらいで…。
それくらいで、喜ぶなんて…!
この際ならもっと…ルリア(あっ、今は私、かぁ…)を脅して、もっと土下座させれば良いのに。
…と、そんな残酷なことを考えてしまう私。
…うん、そうだった。
私は、自分に立ち向かって吠えてきたーつまり、いじめたり、脅(おど)してきたー同期や上司、家族にさえも、容赦はしない。
そんな人間だった…。
あっ、でも安心して?
自分で犯した罪は、自分で償っていたし!
ーでも…。
罪と言っても、夕食を盗み食いしようとしたくらいしか、していないけどね…!
いやいや、それ、完全に未遂で終わったのでは!?
って、まぁその通りですけど、それが何か?
ー…ええっと…それに何といっても、私は味方には、とても優しく接していたから…!
…ううぅ…うわーん!!
エラさんは、まだ泣いている。
うーん、
「シンデレラ」
の主人公にしては…ちょっとーいや結構、泣き虫過ぎるのでは?
うっうっと泣き続ける本人にこのことを聞いたら、
『ーいいえ、義姉様!
これは、嬉し涙です!』
と、ハッキリ言いきるでしょうけど。
(無事に、エラさんを舞踏会に送り出せるかの、その前に…)
そう、それ以前に!!
…このままだと、エラさん…。
ーあなたかなり、まずいんじゃない…!!!?
ルリアのもう1人の姉と、彼女の実母 (エラさんの義母)ーだけでなくて、他の人にも、いじめられ放題では…!!!?
ーこのままじゃ、皇太子妃になんて…エラさんでは、きっとなれない。
でもー私が、変えてみせるんだ…!
「…そろそろ、泣くのをお止めになっては?
…そんなのでは、また、お母様達に、いじめられてしまいますよ?」
「…そ、ぞんなぁー!!」
私がちょっときつく言っただけで…泣き止んだかのように見えたエラさんの目には、みるみるうちに大粒の涙が、蓄積され、そしてー。
「…う、うわあああぁー!!
あたしを、見捨てないでぇー!!」
エラさんは再び、泣き虫の鬼へと化してしまったのだ!
…これは、まずいっ!!
かなり、まずいよぉー!!!!
これなら、私が、幾ら変えようとしても…っ…!!
ー私が怯んだ、その時だった。
『ー美氷 お嬢様…!
貴女(あなた)は、そんなことで諦める方では、決してない筈だ!』
ー不意に、私の頭の中で、爽斗さんの激しい怒声が響き渡った。
ーううん、響き渡った、と言うよりもーある記憶が、脳裏にフラッシュバックしてきたのだ………。