転生したら、シンデレラの姉だった件
 …そう、あの日ー。
ーあの日、私はー爽斗さんも合格したという、東京大学を受けるのを、止めるつもりでいた。
 …何故なら…あの時の私は、たったの小学 6年生だったから…。
 たったの12歳で、しかも難関大学なんて受けたらー落ちた時の恐怖を思い、直進で止めると告げた、私の頬をー
 パシン! 
 きつく殴って、爽斗さんは、そう叱ってくれたんだ…。

 ー思えば、あの時からだった…爽斗さんに、何もかもを打ち明けられるようになったのは…。

 (…流石に、エラさんを殴ることは、出来ないっ!!
 ー出来ない、けれどー)
 …魔法で、彼女の涙と…まぁ、ついでに鼻水ーを止めることは、可能な筈…!!!!
 …だよね…多分?
 ー私はゆっくりと、片手に持つ杖を、彼女に向ける。

 ーそして…少し思案し、シンデレラへ向けて、放った、呪文はー
 「…涙を止めるもの…
 Those who stop tears (ドーズ フー ストップ ティアーズ) !」
 バーン!
 それと同時に、金色だった杖の光が、藍色の閃光に変化し、エラさんを包み込む。
 サアアアアッ!
 蒼の光が消えた時にはー
 「…あれ…涙が…止ま…った…!?」
 鼻水も、涙も引いた、普通の顔の状態の、エラさんが居た。
 …勿論、涙なんて、あっという間に止まりますよ、エラさん…!
 何故ならこれは、涙を止めるために私が産み出した、魔法なんだから…!
 少し得意気になりながら、私はエラさんに向き直り…改めて、自分の覚悟を告げた。
 「…エラさん…私はこれから、あなたを鍛え直して差し上げます!
 ーあなたの 素晴らしいハッピーエンドへと、導くためにね!」
 …その言葉を聞いたエラさんは、
「…ふぇぇー、そんなぁ!
勘弁じて、下さいー!」
 又、泣き出しそうになっている。
 何だか、此方が面白くなりそうなくらいに…。
 って、私まで、面白くなったら駄目!!
 (…エラさんを、ポーカーフェイスに仕立て上げてみせるんだから…!
 ー近い内に開かれる、チャーミング国の、舞踏会までには…!)
 まぁ、彼女が、そのポーカーフェイスを崩して良いのは…。
 王子様だけだということ。
 そういうことに、しておこうかなぁ…?
 しておきたいけど、流石に、無理だろうなぁ…!
 私は再び、杖で彼女を大人しくさせつつ、ため息を吐くのだった…。
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