お願いだから、溺愛しないでっ! ー完璧な お嬢様を目指したいのに、家族&イケメン 毒舌 執事さんからの、甘すぎる溺愛が止まりませんっ!!    ー1ー

 ーマレン・テリル。

 彼女は昔から…
 
 ー否、その生を、神から受けた時からー
 
 …何もかも、完璧であった。

 勉強、バレエ、社交ダンス、経済・政治学まで…。

 ーその為にー

 彼女ーマレンは何時も完璧で、その上

 ー何を考えているのか全く読み取れない…

ポーカーフェイスだった。

 最も、マレンがポーカーフェイスなのは…

 彼女に全く興味を持たない、家族のせいである。

 ーそのことを、マレン以外で知る人はーこの冷たい家族には、1人も居ない。

 ー彼女の発言に、興味を示すことも。

 ー彼女を夜会に連れ出すことも。

 ーそして、彼女を愛することも。

 ー1人も居ないーその筈だった。

 ーなのに。

 それなのに…

 「…私はー完璧令嬢を、目指しますっ!!!」

 「「はあぁっ!!!?」」

 予想外のマレンの言葉にーこの家の者はー家族だけでなく、使用人達もー唖然として、反応してしまったのだ。

 ー余りにも、マレンの言葉が、意外だったから。

 ー彼女の本心を…知らなさすぎたせいも、十分にあるのだが…。

 「お父様の、昨夜の完璧な仕事ぶりを見て、です!!
 あぁ、私も、もっと完璧にならなくては!
と思いまして!!」

 「…す、少し待つのだ!
 お前がこれ以上、完璧になったら…!」

 ーお前、完璧すぎて…!
 天に、女神として、召されちまうんじゃ…!?

 ーテリル家のなかで、最も平凡な長男

 ーエドラ・テリルー

 …30歳が慌てて、彼女に反論すると。

 「…いいえっ、お兄様!!
 夜会に出たことも亡い私を、きっと…他のご令嬢は、嫌っておられますわ!!
 〈あぁ、偉大なるお父様の娘なのに、何て躾の無い令嬢かしら!!〉…」

 きっと呆れた顔で、そう言われているのですぅ…!!

 ー泣きそうな顔で、兄に反論するマレンを、

 「「落ち着け(きなさい)よ、マレン!!」」

 彼女以外の家族

 ー父、兄、姉。

 ー3人は必死で

 ー既に

 「完璧令嬢」

 ーとして、沢山の令嬢達から…

ー夜会に1度も出ていないのにも関わらず、尊敬され、慕われている様子ー

 ーのマレンを、必死で止める。

 (ー私の仕事振りを、一度しか見ていないのにー。
それだけで…そんな風に、思ってくれたのか…?)

 ーマレンは何故か、今までに無い程、瞳を輝かせている。
 
ーそして、そんな彼女を…。

 アドラは、今までに無い新鮮な思いで見つめていた。

 ーアドラは、娘がこんなにやる気に満ちた顔をするのを、初めて見た。

 ー思えば…家族全員で、

 「マレン」

 と、彼女の名前を呼んだのも…。

 ーこれが、初めてではないか…!

 ーもしや、自分達が、マレンに

 ーこの娘に、関心を抱き…

 今という時まで、彼女を愛さなかったということのせいで…。

 ーマレンはこんなにも、完璧な令嬢を

 ー完璧すぎる令嬢をー

 目指してしまうようになったのでは? 

 ー原因は、それしか考えられないだろう。

 ーならば…

 「…マレン、その…
ええっと、それなら!
 来週ある夜会にー出てみないか?」

 「…えっ!?」

 ーアドラの言葉に、マレンは、

 『…急に、何を仰っておられるのですかあああぁー!!!?』

 という顔になる。

 この15年間、家族に冷遇されてきたマレンからしたら、当然の反応だろう。

 しかしー

 「…っ!
 …今まで、全く気付かなかったが…お前の笑顔は、とても愛らしい…」

 ーまるで、天使のようだ…!

 ー初めて見る彼女の間抜けな表情に…。

 ズッキュン!

 アドラは、色々な意味で、胸がキュンとなり。

 ー思わず、そう口走っていた。

 「…ええっ…私の妹、女神よりも美しく…!
 それに、父様の仰る通り、とーっても、可愛いですわ♡」

 良くみたら、お目目もパッチリ、顔立ちも整っていますし…!

 ー未だに淑女の 姉 ルオン (28歳)

 …も、その愛らしい顔に、仕草に、声に…。

 ー今さら気付いたのか、父に同意し…珍しく、妹を見る瞳を、ハートマークにした。

 「…み…皆…様…!?」

 ーアドラ達の背後に控える、他の使用人達も。

 彼らの予想外の言動に、非常に、面食らった顔をしていた。

 「…そうだな!
 エスコートには、俺が付き添おう…嫌、君はかなり、可愛い過ぎるから…!
 …さ、拐われるといけないし…!
 やっぱり、最後まで付き合うぞ!」

 ーそして…兄 エドラも…

 …そっぽを向きながらも、面食らったままのマレンにそう言い…

 ーポンポン…!

 ーそれでも照れくさそうに、そのままの格好でー右手で、妹の頭を撫でた。

 「…ふ…えええっ!?」

 ーお父様も、お姉様も、お兄様までも…!

 私に、甘すぎではあああぁ~!!!?

 ーコロリと対応を変えた家族に、マレンは疑惑の視線を向けている。

 「…確かに…マレン お嬢様はーとても興味深い…
今まで、気付きませんでしたが…」

 ーそんな美少女の背後で
 ー有能すぎる アドラの執事の1人…。

 ーアークが、熱のある瞳で、じっと少女ーマレンを見つめている。

 ーしかし、家族の変化に戸惑うマレンには…

 ー彼から、そんな視線を向けられていることにも。

 ーこの出来事が、彼女の運命と恋を、大きく変えることになることにも…。

 ー全くと言って良い程、気付かないのだった…………。
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