2度目の人生で世界を救おうとする話。後編
「紅」
「ん?」
蒼に優しく名前を呼ばれて蒼の方をちらりと見ると、蒼は声音と同じように優しい眼差しを私に向けていた。
「ここ、花びら付いているよ」
ふふ、と笑われて、綺麗だけど私とは違う〝男の人〟の指先で蒼が私の頭に触れる。
ほんの数秒だけ私の頭に触れた蒼の指には可愛らしいピンクの桜の花びらが握られていた。
「えっ、あ、ありがと…」
恥ずかしい!
いつから頭に桜なんて乗せていたのだろう。
次期当主件守護者のくせに頭に花びらを乗せて歩いていたとか決まらなすぎて恥ずかしい。
これで始業式に参加することにならなくてよかった。
恥ずかしくてせっかく蒼に花びらを取ってもらったのに蒼に素気なくお礼を言ってしまった。
「あれ?まだ付いてる?紅ちょっと止まってくれる?」
頬を若干染めて歩いていると首を少しだけ傾げた蒼にそう言われた。
なので私は慌ててその場に止まった。
これ以上恥ずかしい姿でいたくない。
私たちが止まるのを見て、少しだけ前に行ってしまったが、琥珀と武も足を止めた。
「えっと…ここと、ここと」
最初に頭に触れられた。
それから肩、背中、足といろいろなところに触れられる。
最初こそは真剣に、そして切実に蒼に身を託していたが、徐々にそれが疑問に変わり始めた。
本当に花びら取ってくれている?
もし、全部本当に付いていたのなら桜の花びらシャワー浴びてるくらいの規模にならない?
疑いの目で蒼を見つめるとパチリと蒼と目があった。
「はい、おしまい」
私と目が合った蒼はどこか愛おしそうに私に笑いかけると私の頬に優しく触れた。