2度目の人生で世界を救おうとする話。後編
ここにあのレベルの妖が居られるはずがないのだ。
妖界の実質No.2である暁人であっても、単独でここに来るのは無理だ。
大厄災と呼ばれた絶対の力を持つ龍の力があって初めて暁人はここへ来ることができていた。
それがあの妖は今単独でここに来ている。
「…」
まさか龍が手を貸した?
その為に職員としてここへ来た、とか?
いや、龍があんな弱い妖を使うとは思えない。
もし龍が今の状況を作るなら秋の合宿の時のようにある程度は強い妖を招き入れるはずだ。
じゃあこの状況は?
「紅、武、琥珀」
冷静な蒼の声がする。
それと同時にふわりと私の体が宙に浮いた。
蒼、武、琥珀も私と同じように蒼の風の能力によってその場に浮いている。
蒼はガラッ!と勢いよく窓を開けると、風の能力で3階の廊下から私たちをグランドの姫巫女のところまですごい速さで運んだ。
「あ、ああっ!た、助けて!」
地上に着いた私たちの目の前には泣きながらこちらを見ている姫巫女とそんな姫巫女に迫る鬼の妖の姿があった。
この距離で見てしまったらもう否定する余地なんてない。
彼女は間違いなく姫巫女だ。
小動物のように小柄で愛らしいお人形さんのような容姿は同じ女である私とはまるで正反対だった。
私が諦めてきた全てを姫巫女は持っている。それも当然の権利のように。
それを見せつけられる度に私は苦しくなったし、あんなにも自分に誇りを持てていたのに持てなくなってしまった。
彼女の存在は私を惨めにさせた。
だから私は姫巫女が…。