2度目の人生で世界を救おうとする話。後編




「起きて?寝ちゃダメだよ?」



可愛らしくもだけどどこか妖艶に微笑み、首を傾げている朱と目が合う。

私今、この可愛らしい美少年、朱にキスされた?目尻にされたよね?柔らかかったよ?


訳がわからなくて朱を凝視していると、その美しい唇からいたずらっ子のように朱は少しだけ舌を出した。



「また寝ようとしている姉さんが悪いんだよ?」

「っ!」



この子はいつの間に愛らしい美少年から小悪魔な美少年にシフトチェンジしてしまったのだろうか。

朱からのキスだと理解してしまった私の心臓は朝だというのにばくん!ばくん!と大きな音を立て、元気いっぱいだ。
心臓が今にも壊れそうでしんどい。



「…しゅ、しゅう!心臓に悪いことしないで!」

「だってこれが目を覚まさせるには一番いいでしょ?」

「そうだとしても他の起こし方を希望します!」

「んー?でもこれが一番いいしなぁ」



顔を真っ赤にして何とか朱に抗議してみるが、朱は可愛らしくにっこりと笑い、私の抗議を全く受け入れなかった。
とても楽しそうだ。

朱と私は姉弟にしては距離感がおかしい。
主に朱の距離感がバグっているせいで、だ。

前までは長年連れ添ってきた姉弟ということもあり、バグっている距離感にも慣れていたが、今は違う。


朱は私の弟じゃないし、朱は私のことを異性として好きなのだ。

そう思うと意識せずにはいられない。



2度目を始めて1年が経過し、春がやってきた。
まさか朱との関係がここまで違う方向に変わってしまうとは思いもしなかった。

1度目の今頃の私は全てを知ってしまって朱を全力で避けていたが、今では変わらず一緒にいる。
いや、変わらずに一緒にいるが、時々こうやってドキドキさせられて朱をどうしても異性として見てしまう瞬間が増えつつある。


朱ってこんなに小悪魔っぽくて翻弄するタイプだったか?
これも私がシナリオを変えてしまった影響によるものなのか?





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