2度目の人生で世界を救おうとする話。後編
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寮から校舎まで続く道をいつものように朱と2人で並んで歩く。
所々に植えられている桜の木の花びらたちはほぼ散っており、風が吹くたびにふわりと桜の花びらたちが宙を舞っている。
ほんの数週間前までは中等部の生徒だった朱も4月からは高等部の生徒だ。
朝日を受けながら私の隣を歩く朱は私と同じ高等部の制服を着ていた。
1度目の今頃の私はもうこの時期には朱と距離を取っていた為、こんな風に一緒に通学することも、近い距離で朱の高等部姿を見れることもなかった。
1度目とは違い、朱とは変わらず良好な関係を築けていることが私は何よりも嬉しかった。
「朱、やっぱり高等部の制服もよく似合っているね」
高等部の制服に朱が袖を通して以来、毎日、毎回、朱に同じことを言ってしまう。
それでも朱は嫌な顔一つせずにいつものように「ありがとう」と笑ってくれた。
呆れた顔なんて絶対にしない優しい子なんです。
朱は。
「紅、朱」
「…」
後ろから私たちを呼ぶ武の声がする。
その声を聞いた瞬間、朱の顔からスッと表情が消えた。
先程まで天使のような笑顔で私と笑い合っていたのに。