2度目の人生で世界を救おうとする話。後編





「…彼女は大切な姫巫女様です。俺はそう思っています」

「紅にとって由衣はちゃんと大切な存在なんだね」

「はい」



嘘をついた。
でもそうするしかなかった。

じっと私を見つめる麟太朗様は私の短い言葉から本質を探ろうとしている。
麟太朗様ならきっと私が嘘をついていることなんてお見通しなのではないだろうか。



「…紅」

「はい」

「私はアナタを信頼している。これからの能力者たちを支える若き人材だ。そして能力者としての実力だけなら私と充分肩を並べることもできる。そんなアナタだからこそこれからも正しく、真っ直ぐあって欲しいんだ」



期待や信頼。1度目の私なら嬉しい麟太朗様からのお言葉だ。
努力してきた私の一つの結晶のようなものだから。


…まぁ、今の私は何も思わないけど。
むしろ、喜ぶよりも麟太朗様の言葉の真意を冷静に考えてしまう。


麟太朗様は全てわかっているから素直に私の気持ちを吐けと言っている、と。

ここは変に嘘を通して、信頼を失ってしまう方が痛いかもしれない。
麟太朗様を敵に回すということは能力者を敵に回すみたいなものだし。



「…姫巫女様は何度もいいますが、人類にとっても俺にとっても大切な存在です。ですが、同時に俺は姫巫女様にどう接していいのかわからないのです。今まで同年代の同性とはあまり関わる機会がなかったので…」

「そういうことか…。じゃあ紅は本当に由衣のことを大切に思っているんだね」

「…はい」

「わかった。素直に話してくれてありがとう、紅」

「至らない守護者で申し訳ございません」

「構わないよ」



頭を下げる私に麟太朗様が慈愛に満ちた笑顔を向ける。
いつもの麟太朗様に戻っている。
よかった。何とか納得させれたみたいだ。



「紅はずっと特殊な環境にいるからね。いろいろ難しいこともあるだろう。少しづつでもいいからそんな自分と折り合いをつけなさい。そして私たちの由衣を悲しませるような真似はしないようにするんだよ」

「はい」



にっこりと笑う麟太朗様に私は力強く答えた。


…これ以上麟太朗様に目をつけられないようにしないとね。
まずは姫巫女が私から嫌われてるって思わないように行動しないと。





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